火の花

 満月になりきれない黄色い丸い月の上
 刹那に輝く花が舞い散る

 何百という人々の心は一つに
 ぴったりのタイミングで
 歓声をあげる
 拍手をおくる

 広大なスクリーン
 そこで繰り広げられる花の舞
 その真下
 寝転がって見上げる小さな人々

 この偉大な華麗な花々を
 その小さな機械におさめようとする人よ
 このスケールはその中に入るのか

 いつもは孤高の月
 今日は花々に押され気味

 スクリーン上に
 打ち上げられては
 瞬間消えゆく
 その儚さを気付かせないように
 力強く華やかに


 花々が完全に散ったとき
 思い出す
 手元の
 甘ったるいジュースとなった
 夏氷を


                        2007.8.13. 制作


 花火を作った人は偉大だと思いますよ。
 ここまで人の心を捉えて離さない夏の風物詩はありませんよね。



                                                                      photograph by CELESTE BLUE