イアー

 彼女は嘘吐き
 オレを好きだと言いつつも
 他の女と結婚しろと言ってきた
 子供を作れと言ってきた

 彼女は嘘吐き
 オレをありとあらゆる嘘で
 騙してきた 縛ってきた
 彼女の考えなんて
 知らない わからない

 それでも
 オレは彼女から離れられなかった
 どんなに泣かされても
 どんなに使われても
 美しくて
 どこか儚げな彼女を
 一人にはできなかった

 だからまだ
 オレは彼女の隣にいる
 瞳を閉じることもできなくなった
 彼女の横に

 最期まで
 彼女は嘘を吐いた
 オレのことを 愛していると
 嘘だと言えば
 切なそうに
 一筋の涙を流した
 彼女が見せた初めての涙を

 瞳ぐらい閉じてやろうか
 すると気がつく
 彼女の瞳には
 オレしか映っていないことを
 オレ以外 何も映っていないことを

 あぁ この瞳が真実だったんだ
 これが真実
 ずっと近くにあった真実

 あぁ 彼女の瞳に霧がかかり始めた
 なぁ…
 死んだなんて…
 ウソなんだよな?!
 
 ・・・・・・


                        2007.7. 制作


 この人はどんな状態に置かれているのでしょうね…
 瞳に霧がかかるって…(汗
 まぁ、最後の一文はそういうことも踏まえてお考え下さい…(笑


                                                                      photograph by NOION