The morning

 花の香が漂う
 微風が吹く
 長雨のあとの朝

 太陽は
 影を作らぬように燦燦(さんさん)と輝く
 長雨で濯われた空は
 塵一つなく輝く
 木々は
 雫で光り輝く

 この世のなにもかもが
 いきとし生けるすべてのものが輝いているような
 そんな春の朝

 新たな命を祝福するような
 汚れを洗い流したような
 そんな清々しい朝

 けれど今は
 それが憎い
 憎々しい
 君が逝った朝

 君だけじゃない
 私を騙しつづけ
 裏切った
 君と君の最愛の人が逝った朝

 私は君を愛していた
 君は彼を愛していた
 彼は君を愛していた

 君の計略なんて知らない
 ただただ許せなかった
 私の夫の
 君の謀が

 許せない
 許せないけれど

 あなたたちのスガタには
 あなたたちの愛情の深さが
 命懸けの愛情の深さが
 私には到底入り込むことのできない愛情の深さが
 染み出ていたから

 隠されていたアルバムのなかのあなたたちは
 私の知らない最高の笑顔をしていたから

 桜の下で
 学制服を着た
 これ以上の幸福はないような
 そんな顔のあなたたちを見たのかもしれない


 そんな朝


                        2007.7.7. 制作


 この詩の冒頭を思いついた時はこんな感じになるとは思っていませんでした(苦笑
 本当に、花の香が漂っていて清々しい朝だったのですが…
 相変わらず歪んでいますね、私。



                                                                      photograph by NOION