からのかけ

 去年までは毎年
 桜なんてどうでも良かった
 だけど今年は
 なぜか二月から
 気が早く
 楽しみにしていた

 なぜだろうなぜだろう
 わからないけれど
 早く桜に会いたくてたまらなかった
 
 そして三月末
 待ちに待った桜が咲き始めた

 ほらまた
 ほらあそこにも
 なぜか頬が緩む自分
 なぜか嬉しくなる自分

 なぜだろうなぜだろう
 わからないけれど
 桜に惚れている

 桜が散れば
 何かわかるかもしれない
 
 何か
 この謎を解く手がかりが
 見つかるかもしれない

 桜がこの国になかったら
 正に民の心は
 のどかであっただろうに


                        2007.4.4. 制作


 最後の一連。在原業平(ありわらのなりひら)の歌です。
 『世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし』
 (世の中に全く桜がなかったとしたら、春を過ごす人の心はのんびりと落ち着いていられるだろうに。)
 最近、つくづくこの歌に共感するようになりました。あ、いえ、そこまで年ではないですよ?(苦笑
 



                                                                      photograph by NOION