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貴方に早く会いたくて
私だけを見ていてほしくて
―――・・・・・・

い咲き*

 まだ寒い、冬のある日
 私は咲きました
 まだ誰も咲いていない今日
 私は咲きました
 
 去年見た貴方の
 私たちを見る顔が忘れられなかった

 けれどそれは
 「私」ではなく
 『私たち』だったから
 悔しくて悲しくて

 その年
 私は誰よりも早く散ってしまった
 本当は
 一番長く咲き誇っていたかったのに
 ヒトが
 疲労でいきなり頭が白くなるように
 私も
 辛さであっという間に散ってしまった
 ヒトで言う、涙となったのかもしれない

 貴方は
 そんな私の、桃色に広がった足元に立ち
 幹を撫で悲しそうに微笑んだ
 言葉のないそれは
 私を一層悲しくさせた
 そんな笑みをしてほしかったわけではないのに

 この行為が
 己の命を縮めようとも
 貴方への好意が
 その不安より勝っていたから
 
 決して届かぬ思いと知りながら
 私は願い咲くだけ
 貴方のあの
 優しい眼差しを私だけに

 私だけに向けてもらえるように

 ・・・・・・
 その日 
 どれよりも早く美しく咲き誇り
 どれよりも早く美しく散っていった
 桜があった

 その姿は
 美しかったが儚く
 今にも倒れそうであったが
 幸せで満ち足りたもののようであった

 そう、ずっと桜を見つめていた人が綴った

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貴方に早く会いたくて
私だけを見ていてほしくて

私は咲き誇っていました
―――・・・・・・


                        2007.3.15. 制作


 作ったのは冬ではなく、春ですね、普通に(苦笑
 まぁ、桜を想ったら思いついた、という感じですね。
 またしても長いですね。これは詩というより文章ですね…(汗
 少々いつもと違う始まり方にしてみました。



                                                                      photograph by ぐらん・ふくや・かふぇ