効果

 親父と喧嘩した
 殴りあいにはならなかった

 最近の中坊は
 あんまり親と喧嘩しないらしい
 じゃぁ俺は
 サバ読んでるのか

 なんて思って
 何ともないさと笑いたかった
 けれどもそれは叶わずに
 我慢していた涙が流れた

 たぶん
 最後に泣いたのは年少の時
 母さんが死んだとき
 それから転んでも泣かない強い子だと褒められてきた

 それがなんだ恥ずかしい
 今じゃ世界で一番の弱虫じゃないか

 涙を止めようと
 上を向いても
 歯を食い縛っても
 何の意味もなさない
 次から次へと零れ落ちる涙

 馬鹿みたいだ
 頭に血が上って逃げ出して
 何で川原なんかに来ちまったんだろう
 ご丁寧に夕日が綺麗で
 少年漫画の読みすぎなんじゃないか

 親父も
 ガキの頃は父親と喧嘩したんかな
 殴りあいもしたんかな

 その時も
 俺みたいに言うこと聞けずに
 歯を食い縛ったんかな

 夕日がもうすぐ地平線の下へ行きそうだ

 頑固親父が探しに来るはずないか

 走って家帰って
 親父引っ張って母さんの墓に行こうか

 母さんに許してもらおうぜ
 親父


                        2009.2.16. 制作


 夕日は一つ前にも使いましたね。
 夕日や夜と言うのは感傷的になりやすく、マインドコントロールされやすい。
 人間って面白いですよね。


                                                              photograph by m-style