two cups of coffee

 
寒気を感じて
 目を覚ました

 いつのまにか
 暖房が切れていた

 テーブルで寝ていたせいで
 手足が変に痺れている

 頬や目尻がかさついていて
 擦るとそのかさつきはとれていく

 窓の外は夕焼けで
 机上のマグカップが二つ
 白く浮かんでいる

 ちょっと変わったデザインのそれは
 世界に二つしかないもの

 太陽のようなあの満面の笑顔で
 あの人が持ってきたもの

 互いが刻んだ
 互いのイニシャル

 幸せの象徴みたいなものだった

 今は机上に無造作に置かれて
 他人のようにそっぽを向いている

 それが嫌で
 残っていた冷めたコーヒーを一気に流し込んだ
 一滴の涙が入ってしまったコーヒーを

 いつもより苦く感じたのは
 気のせいじゃない


 ねぇ
 帰ってきてよ


                        2009.2.15. 制作


 幼い頃に泣きすぎて疲れてそのまま机の上で寝てしまったことはありますが…
 こういうことはありませんね、今のところ(苦笑
 こんな経験も必要ですよね、人間の成長上。
 あ、ちなみに久しぶりに背景ブラックです。


                                                              photograph by FOG.