Rebond

 私の肩に顔を埋めたあなたの頭を
 撫でながら考えた
 何でこの人を好きになってしまったのかと
 何でこの人は私を拒否してくれなかったのかと

 私はあなたの一番じゃない
 そんなこと最初から知っていた
 この恋は許されない
 そんなこと最初から分かっていた

 それなのに
 想いはとまらず
 分かり切っていた行方を変えようともがいていた

 恋を終わらせようと
 苦しみから逃げようと
 あなたに想いを告げたあの日
 拒否しなくてはいけないはずのあなたは
 なぜかほほえんで私を受け入れた

 嬉しいはずの私
 嬉しいはずの涙
 それは全て
 受け入れなくてはならない未来を
 苦しめる女をもう一人作る未来を
 心のどこかで分かっていたから

 そしてどこかで
 あなたが私を選ぶことを望んでいたから

 嫌っていたはずの香水をつけはじめたの
 あなたはこの名前を聞いたけど
 私は笑って誤魔化したわ

 言えば愚考だと言うでしょう
 言えば可笑しいと笑うでしょう
 分かっているはずの私がこんなことをするなんて

 あなたが振り向きもせずに閉めたドアに
 何度枕を投げ付けただろう
 その音を
 あなたはドアの前で聞いていたのでしょう

 私の唇は
 あなたの唇と合わされることはなかった
 最後の一会を除いては

 唇を放して言ったさよならは
 部屋を出ていくときにも言ったことがなかった

 身体だけじゃなかった
 あなたも
 気持ちもあったんでしょう
 あなたも

 だから最後にだけ
 愛しているなんて言ったのでしょう

 それで終わりのはずなのに
 あなたは私を縛るのね

 引き止めることだってできたのに
 それを許さないように
 優しい目を向けるのね
 まだ

 男は臆病で狡い生き物
 世間の目に負けたのよね
 あなたは

 私はどんな目を向けられようと
 あなたの目だけあれば
 一緒になれたのに


 少しでも
 縛りたかった
 あなたを
 少しでも
 私の存在を知らせたかった
 あの人に

 だからつけたのよ香水を

 捨てられずにいる
 束縛という名の香水を


                        2009.2.8. 制作


 香水ネタは二回目(おそらく)ですが、ともにハッピーエンドではありませんね(苦笑
 もう少し良いものを今度書いてみたいとは思います。
 このままではまるで、私が香水に嫌な思い出があるみたいなので…(笑
 ありませんよ、嫌な思い出なんて。強いて言えば、香水の匂いの大半が私を気持悪くさせることぐらいで…(ダメだこりゃ)


                                                              photograph by m-style