arrest...

 生命が終わる時の音を聞いた
 あの胸の鼓動が止まるまで
 小さな身体を抱き締めて
 胸に耳つけ聞いていた

 現実から目をそらし
 彼から目をそらし
 彼を一人にすることは
 やろうと思えばできたこと

 できなかったのは
 彼のあの目が あの微笑みが
 僕をとらえて放さずに
 彼との短すぎた思い出が
 走馬灯のごとく浮かんだから

 血をわけた彼の最期とともに
 僕の心臓も仕事をやめてしまうのかと思うほど
 聞き惚れて 見惚れて...

 安らかに 美しく
 あの小さな心臓を
 ゆっくり
 ゆっくり 止めていった


                        2009.1.26. 制作


 心臓の音が止まる時の音を聞いていた父親がいたようです。
 テレビ番組で見たような気がするのですが、父親がそうやって言ったときに、私の琴線に触れたようでした。
 私にはそんな勇気はないと思います、恥ずかしながら。


                                                              photograph by ぐらん・ふくや・かふぇ