初雪

 初雪が吹雪なんて
 何の嫌がらせだよと
 改札口から作り物の闇を睨む

 突然の吹雪に
 慌てふためく通行人
 コートの襟をたてるサラリーマン
 キャーキャー騒ぐ女子高生

 そんな中
 見たくもなかった恋人たち
 二人寄り添い
 手を繋ぎ
 まわりの雪が溶けそうだ

 3年前の初雪は
 こんな荒々しいものではなくて
 もっと優しく
 もっと温かかった

 ゆっくり舞い落ちてきた雪に
 彼女は微笑んだ
 その美しさに目を奪われて
 時が止まった

 見惚れてしまった自分に照れ笑い
 誰に隠すつもりだったのか
 それをマフラーに潜め
 彼女の手を掴み
 俺のコートのポケットに突っ込んだ

 それと同時に
 彼女の唇を掠め取るのも忘れずに

 何が起きたか分からずに
 雪が舞う夜空を眺めていた

 徐々に赤くなる頬に
 俺は気付かぬふりをして
 止めていた足を動かし始める

 照れて下を向いてしまった彼女が
 何より愛しかった
 何より抱き締めたかった

 ホワイトアウトした光景に
 彼女の白い肌を思い出す

 近くて
 遠すぎた
 それだけのこと

 止みそうもない攻撃に
 ため息一つ
 口元には笑みを

 覚悟を決めて
 勢い良く
 白銀の世界へ飛び出した


                        2008.12.27. 制作


 私が住んでいるところは、まともに初雪が降りませんでした。
 さらっ、と微かに舞っただけで…(苦笑
 吹雪にでもなればいいのに…(詩について何も言っていない) 







                                                              photograph by NOION