林檎

 あんたに
 あの人ほどの度胸があるのなら
 食ってごらんよ
 噛み付いてごらんよ
 この毒林檎

 口をつけただけで
 三途の川を見られるはずよ

 あの川から還ってこられたら
 好きなだけ
 食べさせてあげるわ
 この毒林檎

 苦しめば良いのよ
 私が苦しんだ何百倍も
 あの人が味わった何千万倍の
 苦しみを
 味わえば良いのよ

 この毒に汚染された林檎
 誰が毒の鍋に浸けたのか
 分からないなんて言わせない

 言えば殺してあげるわ
 あんたが作ったこの毒で

 死なばもろとも
 蜂のように潔く
 一緒に死んであげるわ

 あの人の代わりになりたいのならば
 あの人ほどの度胸で
 死ぬ覚悟で

 噛み付きなさい
 この毒林檎に

 (いざな)ってあげるわ
 毒の快楽に

 さあ
 食い付いてごらんなさい

 このあたしに


                        2008.12.25. 制作


 何かに取り憑かれたかのように書いた詩です。
 自分でもなんでこんなものを書く気になったのか…
 もしかすると、70、80年代の歌を聴いていたからかもしれません。 


                                                              photograph by m-style