ードレール

 歪み折れた
 尋常ではないガードレール
 寂しく供えられた
 一本のコスモス

 それらが物語る
 事故の無情さ
 亡き者の寂しさ

 涼しくなった夕方
 ふいに足が向かったのは
 このガードレール

 数日前
 大きな事故があった
 それは地獄のようだった

 被害者は
 身寄りのない浮浪者

 それだけが
 自分が得ることのできた情報

 だから
 どこの誰かも知らないし
 どんな人なのかもわからない

 それなのに
 ここへ向かう途中の花屋の花を
 ガードレールへ
 そっと置く

 腰を落として
 手を合わせて

 見ず知らずの人間に
 涙する

 こんな寂しい世界があることに

 こんな世界が成り立っていることに

 涙する


                        2008.9.7. 制作


 バスの待ち時間、つい数日前まではそんなことのなかったはずのガードレールを見て、ふっと思いつきました。
 いつの間にあんな悲惨になったのやら。
 ただぶつかっただけなら良いのですが。 










                                                              photograph by NOION