が聞こえる

 ゆらゆら揺らめく煙を見つめる
 心地よい香が風に揺られる

 後ろを向けば
 街一帯が見渡せるパノラマ

 こんなに見晴らしが良いところに
 眠っているんだな
 親父

 まわりを掃除して
 水を撒いて
 花を供えて

 来るのが遅くなって
 すみません
 間に合わなくて
 すみません

 暑さですぐに乾いてしまう水
 暑くても
 この風景があるから
 大丈夫だろ

 真っ青な空を見上げる
 久しぶりに
 空が綺麗だと思える
 この十年
 背負い続けていた重荷が
 下ろせた気がする

 許してもらえたなんて思わない
 それでも
 この清々しい感じ

 それだけでも
 この地に来て良かった

 息を切らせて
 汗だくになって
 上った坂を下る

 爽やかな風に乗って
 聞こえた気がした

 親父の声が


                        2008.8.15. 制作


 墓参りに行った時に思いついたものです。
 親の墓参りもしない息子の話を聞いた所為もありますが。 


                                                              photograph by NOION