金魚

 祭りの土産のために
 我が家に水槽が増える


 人間に勝手に作られ
 人間に勝手に遊ばれる

 ただ単に
 観賞用として生きていければ
 まだましだ

 日本の夏祭りでは
 金魚すくいなんて風物詩

 力比べをする悪ガキたちにかき回され
 恋人に見栄を張る男がかき回す
 子どもにせがまれる父親にかき回され
 興味本位で挑戦する女の子たちがかき回す

 それらから必死に逃げ延び
 体力消耗

 挙げ句の果て
 一匹もすくえなかった人間どもに
 サービスする金魚屋のオヤジ

 そうしてやってきた金魚たち
 一週間過ぎて
 一匹が死んだ

 金魚たちは
 何を思って死んでゆくのだろう
 人間を恨んでいるのだろうか

 そんなこと
 その小さな脳で考えられるのだろうか


 そうやって
 必死に泳ぎ回る小さな魚たちを
 ぼーっと眺めて
 いつまでもつかを考える

 結局
 この自分も
 身勝手な人間の一人


                        2008.7.27. 制作
 

 なんて思ってしまいましたよ、実際に。
 会場に運ばれるまでにも体力を消耗してしまいますしね、彼ら。
 あ、人称が行ったり来たりする個所がありますが、それはわざとですので。


                                                              photograph by Lovepop