逃げられた
 (くう)を舞う桜の花びらに
 
 とても優雅に舞うそれを
 とても捕えてしまいたい
 これは一種の束縛欲

 とても艶やかに舞うそれを
 とても自分以外の人間に見せたくない
 これは一種の独占欲

 掴もうとすれば
 この手から華麗に逃れる
 やっと手のひらに乗ったと思えば
 すぐに風に攫われる

 無性に哀しく
 無性に悔しい

 だから我を忘れてしまう
 だから時間も忘れてしまう

 それでも
 捕まえられないそれ

 なぜか
 胸が苦しくなる
 痛みが走る

 その理由は
 考えるまでもない
 この花びらたちは
 君に似すぎているのだから

 その逃げ方も
 その見事な咲き方も
 その
 潔い散り方も
 何もかもが

 
 そして僕は
 何もかもが
 桜の幹枝
 だった


                        2008.4.8. 制作


 即興です、完全に。
 “僕”が幹枝だという点、なぜだかわかりますか?
 そこはあえて作品中に答えを書かなかったのですが。
 まぁ、彼の状況と幹枝の役割・状態を考えればそこそこ答えは出ます。わかりにくい意味もありますが。
 そこのみならず、他の個所にもいろいろと意味を持たせてみました。
 わかっていただけないのが怖くて、あまり大きくはできません(汗
 


                                                               photograph by CELESTE BLUE