薫る

 突風に煽られ
 よろめいて
 掠めた桜の香

 儚く降り積もる
 桜花(さくらばな)
 その桜色の海が
 大波を立てる

 あんなに急いで
 あんなに機嫌悪くして
 僕はどこへ行こうとしていたのだろう

 そよ風に乗ってやってきた
 沈丁花の甘く誘う芳香
 水仙の気品漂う香気

 通る人々は必ず
 見惚れる桜並木
 山の方もその色で染められる

 何で見えていなかったのだろう
 この風景

 紋白蝶がよく似合う
 菜の花

 誇らしげな
 タンポポ
 謙虚にたたずむ
 スミレ
 可愛らしい
 オオイヌノフグリ
 小さな口付けを贈る
 ホトケノザ
 子どもが喜ぶ
 カラスノエンドウ

 大きな花弁を
 美しく降らす
 白木蓮

 愛らしい甘さの
 雪を積もらす
 雪柳

 こんなに心地好い空気
 こんなに心地好い風景
 どうして見えないふりをしてたのだろう
 こんなに懸命に生きている生命

 さっき起きたことなんて忘れて

 ゆっくり歩を進めれば良い
 ゆっくり時が流れれば良い
 春の昼下がり


                        2008.4.6. 制作


 適当にしめてしまいました(笑
 こんな感じがお嫌いな方もいらっしゃるとは思いますが、私は安らげます。
 知り合いが、桜の香りには人を優しくする作用があるように感じると言っていましたが、そうかもしれません。
 香水もできるほどですしね。
 


                                                               photograph by NOION