、早春を開く

 やっと春らしくなってきたなぁ
 なんて
 すべきことはそっちのけで
 ベランダに腰掛ける
 暖かな空気に包まれて
 そのまま
 ぼーっと
 心地よい空間にたたずむ

 室内のほうが寒いなぁ
 とか
 風がないと暖かいなぁ
 とか
 ぼけたような頭で考える

 けれどふと
 中途半端な時期だな
 なんて

 桜が咲き乱れているわけでもなし
 雪が高く降り積もっているわけでもない
 何にもないような
 中途半端な季節

 それでも密かに
 命が息吹きはじめ
 命が目覚めはじめる
 そんな大事な季節

 そう ちょうど
 梅の蕾が膨らみ
 弾けたのが合図であるかのように
 生命たちが活動をはじめる
 はじまりの季節

 そんな思考に耽っていれば
 微かな芳香
 そういえば
 この地にもいたっけ
 号令係

 まだまだ
 蕾が多くても
 その花一つ一つは
 自らの存在を主張する

 何だか急に可笑しくなる
 そうか そうなんだな
 今更気付くなんてね 

 毎年毎年
 春を連れてきてくれて
 ありがとう
 春を呼びし梅の樹よ
 これからも
 朽ちることなく
 この暖かな季節を僕達に

 そして
 歩きだそう
 暖かな空気の中
 僕達は


                        2008.3.9. 制作


 『梅、早春を開く』
 春の状況が整ったから梅が開くのではなく、梅が春を呼び開くのである。
 つまり、周囲が変わったから変わるのではなく、自分が変わることによって周囲を変えていく、ということ。
 
 まぁ、こんな意味があるようなのですが、こじつけになってしまいました(汗



                                                                      photograph by ぐらん・ふくや・かふぇ