swear black is white

 人間って
 人間ってこんなに汚いものだったんだね、と
 彼女は言った

 まだ
 まだこんな世界を知らなくて良いはずの
 幼い少女が
 僕に言ったんだ

 公園のベンチで頭を抱えて
 この世界に絶望して
 失望していた僕に
 言ったんだ

 こんな
 こんな汚い世界に生まれてきてしまった自分を
 心から呪って

 こんな汚い世界を作ってしまった人間を
 心から恨んで

 人と接するときは
 絶対にバリケードを崩さず
 絶対に警戒心を緩めない
 そんな僕を呪う
 もっと楽に能天気に生きられる
 そんな人間になれば良かった
 そんな僕を恨む

 こんな少女にまで
 こんな汚らしさを教えてしまった
 この世界を恨む 呪う

 歪んだ僕
 歪みそうな彼女

 声を挙げて
 喚き散らして
 泣き叫んでやりたい
 けれど
 そんなことナンセンスだから
 ナンセンスだとわかるから

 
 そうやって
 僕らはどのくらい眺め合っていたのだろう 

 長いことかけて
 彼女の瞳に
 救いを求めるサインを見つけたんだ
 こんな見ず知らずの僕に
 救われようとしている彼女

 手を差し伸べようとすると
 雪の花

 手の平に到達した結晶は
 あっという間に液体へ
 こんな儚いものでも
 一面を真っ白にできる力がある

 それなら
 この世界を
 黒から白へ変えてほしい
 溶けて黒に負けず
 汚くならず
 その白さのまま
 この世界を埋め尽くしてほしい

 それがたとえ
 気休めにすぎなくとも
 この汚れた世界に
 まだ綺麗なものが残っていることを
 この汚れた世界が
 まだ捨てたものではないことを
 教えてほしい
 教えてください
 
 一抹の希望でも
 それに縋ることしかできないのだから
 縋る気力はまだあるのだから 

 気が付けば
 少女と寄り添い
 手を握り合い

 天を仰いでいた

 この願いが届くように
 届きますように


                        2008.2.22. 制作


 これは詩なのでしょうか。
 最近、何が詩で何が詩でないのかわからなくなってきまして。
 いや、前々からわからないのですが、より一層…(汗


                                                                      photograph by NOION