彼の胸に

 高音で途切れることのない
 電子音
 彼の時が
 途切れたことを知らせた

 医師は為す術もなく
 家族は
 人工呼吸機がはずされるのを
 ただ 眺めていた

 現状を認識
 できるはずがなかった家族
 知らせが入ったときにはもう
 彼は彼ではなかったのだから
 包帯に巻かれた人形
 彼らしいところは微塵もなく
 生きていることさえ疑った

 それから数日
 彼は頑張った
 山場を幾度も越えて
 彼は頑張った

 頑張ったのに
 報われなかった

 ただ一人の
 見ず知らずの人間を
 助けたが為に
 彼は
 死んだ

 それが彼の使命
 彼はそう言っていた
 人を守ること
 それが彼の使命

 仕事場の人間にも
 まわりの住民にも
 誰にでも慕われていた
 警察官の中の警察官

 自転車を直してくれた
 子供と犬を探してくれた
 老人の話相手になってくれた

 なんで?なぜ?
 どうして?
 そんな彼が
 死んでしまったの

 神様は意地悪だ
 素晴らしい人ばかりを連れていく
 お供にしてしまう

 ただそれは
 彼が彼の
 使命を全うしたまでのこと
 なのですよね

 私は
 日本人として
 人間として
 あなたを誇りに思います
 警部殿

 あなたの息子は
 あなたのようになるでしょう

 正義感も大切に
 それ以上に命を大切に

 そんな
 そんな彼の胸に勲章を


                        2008.2.17. 制作


 実話です、ご存じのとおり。
 ただ、私も詳しくは知らないので、想像の部分もありますが。
 ですから、あえて名前は出しません。
 こんな警察官も、世の中にはいるんですよね。


                                                                      photograph by Lovepop