味料

 あなたは今日
 誰にあの甘さをもらうのかな
 きっと
 素敵な人なんだろね
 あなたは
 素敵な人だったから

 一年前
 あなたにあの甘さを贈ったのは
 この私
 あなたの隣にいたのは
 この私
 唯一許された人間だった

 来年も
 あなたにこの甘さを贈れることだけを
 それだけを願っていた

 それだけが叶わなかった 

 まさかこの日の直前
 お別れだなんて
 思わなかった

 何を贈ろうか
 普通のもとは違うもの
 あなたの記憶に残るもの
 それだけを
 考えて
 考え抜いて
 材料も買って
 あとは作るだけ
 だった

 あなたを想って
 作るだけだった
 あなたを想って
 包むだけだった

 くだらない
 いつからこんな女々しくなったんだろうね

 あなたの所為よ
 こんな情けない女になってしまったのは

 だから
 おいしいものを作ってやるわ
 あなたが後悔するほどのものを
 あなたが食べたことないほど甘いものを

 少ししょっぱい
 隠し味を数滴入れて

 それから自分で食べるの
 あなたの
 あなたの恋人の
 幸せを祈って

 そして
 甘い過去にサヨナラ


                        2008.2.14. 制作


 女のネチネチしたところを…書いたつもりはありませんよ?(笑
 呪ってやる、なんて言ってませんからね、彼女。
 幸せな感じにできなくてすみません。まぁ、彼女は吹っ切れたみたいですから。
 (念のため言っておきますが、これは私のことではないですからね、決して)


                                                                      photograph by FOG.