初深憂(はつしんゆう)

 新しい年だなんて
 全く感じない

 紅白を見ても
 除夜の鐘を聞いても
 雑煮を食べても
 年賀状が届いても

 いつもと何にも変わらない
 いつもと変わらず無気力で
 いつもと変わらず空虚

 だけどはっと気付くんだ

 この日を迎えたかった大勢の人がいたことに

 年を越せたら奇跡だと
 思い
 気付き
 告げられた

 そんな人々の多くは
 そんな奇跡が起きなかった人々は
 あの初日を見たかったんだ

 今自分は何をしている?
 何の目的もなくテレビを見つめる

 テレビの向こう
 窓の向こう

 昨日まで存在していた人々を
 瞼の裏に憂える


                        2008.1.1. 制作


 新年早々、明るくなくてすみません。
 いや、こんな感じですよ、いつもいつも。
 そういえば、1月はなぜか(理由はわかっていますが)、二作品しか作りませんでした(しかも三箇日中で)。


                                                                      photograph by NOION