あの旅の途中
 彼女は気付いた

 どんなに惚れたものでも
 どんなに好んだものでも

 例えば
 こんな綺麗な風景でも

 長いこと見ていれば
 長いこと近くにいれば

 いつかは
 飽きてしまうことに
 そんな自分は
 飽き性だということに

 それを聞かされた彼は
 恐怖感に襲われた
 彼女の言葉が
 自分にも適用するものだと
 恐怖した
 今までソコにあったはずの
 誰もが羨む関係は
 粉々に砕かれ
 その手からこぼれ落ちていった

 彼女は
 笑いながら話したというのに
 呆れ笑い
 照れ笑い
 だったというのに

 それから彼は
 彼女と毎日会うのを避けた
 彼女が禁断症状を起こすぐらい
 彼女が彼を自ら求めるまで
 愛しい気持ちを押さえ付けた
 いつも新鮮な自分を感じてもらえるようにと

 けれど彼は気付いた
 人間誰しも老いていくことを
 人より秀でているであろう
 この容貌も
 いつかは皴だらけ
 このスタイルも
 いつかは崩れゆく
 そうなったら
 彼女は完全に
 自分に飽きてしまう

 どうすればいい?
 どうしたらいい?
 若返りの薬なんてあるはずない
 どうすればいい?
 どうしたらいい?
 加齢の止まる薬なんてあるはずない

 時が経つほど
 ますます彼の焦りは
 恐れは苦しみは
 大きくなり
 ますます彼女との距離は
 広がった 


 ある日
 大量の薬とともに
 発見されたカノジョ

 もっと
 もっと愛してほしかった

 それだけを残して


                        2007.12.31. 制作


 外見だけに捉われている哀れな男。
 女は見た目だけで男を好きになったわけではなかったのに。
 自分も女と同じように女に惚れていることに気付けなかった愚かな男。
 お互いに気付けず伝えられなかった馬鹿な恋人たち。
 と言う感じでお願いします、まとまっていないので…(汗


                                                                      photograph by FOG.