幻影

 ふと
 空を仰ぐ
 理由なんかない
 ただ空を見たかった 

 ねぇ
 こんなに
 こんなに綺麗な雲が広がっている
 秋特有の鱗雲
 すごい
 広大なスケール
 まるで
 龍が舞っているよう
 天頂へと
 ひたすら昇りゆく
 夕陽に向かい
 赤く染まりゆく
 悠々と昇りゆく龍神 
 
 けれどそれは
 長くは保たず
 幻の生物であるが故に
 じわじわと消えゆく龍
 さっきまで空を舞っていた
 赤き龍はもう
 幻


                        2007.10.30. 制作


 ノンフィクションです。
 久しぶりに早く帰ることのできた帰路での出来事です。
 けれどその感動が…うまく言葉にならないのはいつものことですね…はは。



                                                                      photograph by NOION